2010 3.18-28 switch point 国分寺
作家コメント
彫刻と石
いつも制作は手に伝わる感覚を頼りに木を彫ることから始める。
テーマやイメージがあるわけでなく、只、触覚的な肌触りを頼りに身の回りから何かを選んで、それを真似て彫ってみる。
今回、気になって始めてみようと選んだモノがアトリエの片隅にあったロールの束である。
何年か前に浅草の革問屋さんでデザインと素材の組み合わせが絶妙にマッチしてて買ったものだ。
色とりどりのストライプ状のデザインをインクジェットで革にプリントしたもので、端材の残りが格安で売っていたものだ。
1メートル四方の豚の革をロール状に巻くと筒状になり、デザインが奇抜なゆえ、まるで彫刻物のように見える。
これで面白いものが出来るんじゃないかと言う期待もあるが、ひとまず、これを彫ってみる。
制作の動機作りのように始めた木彫が作品として使われることは少ない。
とりあえず始めてみる。ある程度の密度が上がったところで、又何かを作り始める。
次の展開に繋がるような要素があるわけでなく、かと言って何かに向かってると言うわけではない。ある程度、制作がほぐれた頃に、全体的な過程を振り返ってみる。
今回、始めた最初の革ロールの木彫が何か背の高い器のように見えてくる。
部屋の机にあった、小石をその木彫の上に置いてみる。
結構、馴染んでみえる。とりあえず、今日はこのまま。
石の名前はアレキサンドライト、知る人ぞ知る、結構、名の知れた石だそうだ。
何となく石の置かれた彫刻が台座のように見えてくる。はたして石は必要か。
決定を下すよりは、その過程の全容を見る方が無理がない。